そらをとびたいな

 トントン、トントン。
 ユウキくんがそらへとんでいく。
 トットット、トンッ。
 あおいちゃんがそらへとんでいく。
「おーい、ハナちゃん。こっちへおいでよ!」
「ハナちゃんもいっしょにおそらをとぼうよ!」
 ユウキくんもあおいちゃんも、シュンくんもかえでちゃんも、みんなたのしそうにそらをスキップしている。
 トントン、トトトン。
 トットット。
 いいなあ、いいな。わたしもそらをとびたいな。
 でも、トットトト。トンッ、トン。
 わたしはそらをとべないの。
「ハンはスキップができないから、ぼくたちとちがってそらをとべないんだよ」
「そんなこといっちゃだめだよ。ハナだって、たくさんれんしゅうしてるから、ぜったいとべるんだ」
「あたしたちだって、さいしょはとべなかったじゃない」
 スキップ、スキップ。ランラララン。
 わたしのうえでぐるぐるとまわるようにとんでいるみんなは、たのしそうにスキップしている。
 いいなあ、いいな。わたしもそらをとびたいな。
「おおい、おおい。そらとぶこどもたちや。じかんだよ」
 そらのうえからせんせいのこえがきこえてきた。
 そらをみあげると、みんなよりもっとうえ。とてもたかいところにせんせいがいる。
「はーい!」
「はあい」
「バイバイ、ハナちゃん」
「またねー、ハナ!」
「きょうはとべなかったけど、あしたはきっととべるよ!」
「がんばって!」
 トントントンッ。
 トットトト、トーントン。
 わたしにてをふりながら、みんなはせんせいのいるそらのたかいところへとんでいった。
「いいなあ、そらをとびたいなあ」
 みんな、みんな、とんでいってしまった。
 おにいちゃんもおねえちゃんも、ちいさいこたちも。
 みんな、みーんなとんでいってしまった。
 そらをとぶには、スキップができなくちゃいけないんだ。
 どうしてかはわからないけれど、おにいちゃんやおねえちゃんたちがそういっていた。
「スキップができたら、いっしょにとべるのになあ」
 いいなあ、みんな。そらをとべて。
「おやおや。きみはそらをとびたいのか」
 そらをとぶみんなをみつめていると、わたしのかたにとりさんがとまった。
「とりさんだ!」
「そうだよ、おいらはとりさんだ。きみのなまえはなんていうんだい?」
「わたしはハナだよ。おはなのハナ」
「そうかい、おはなさんなのかい」
 とりさんは、にこりとわらった。
「とりさんはいいなあ」
「なにがだい?」
「じゆうにそらをとべて」
「じゆう? これがじゆうにみえるのかい?」
 とりさんははねをひろげながら、ふしぎそうにしている。
「うん。だって、はねがあればスキップができなくてもそらをとべるでしょ?」
「ううん、それはどうだろう」
 とりさんはかたのうえからとびたって、わたしのあたまのうえをグルグルとまわりながらとんだ。
「おはなさん。おいらたちとりと、おはなさんたちにんげんはちがうものなんだよ」
「うん、しってるよ」
「いいや、きっとしらないよ」
 とりさんはグルグルまわりながら、とんでいる。
 いいなあ、いいな。そらをとべて。
 うらやましいなあ、そらをとべて。
「おいらたちは、はねがなければいきていけないんだ。たべものをとったりするためにね。まあ、そらをとばないのもいるんだけどね」
「はねがあるのに、そらをとばないの?」
「そうさ。そらをとばなくてもいきていけるやつらなんだ」
 それじゃあ、どうしてはねがあるの?
 そらをとばないなら、いらないよね?
「おいらたちはとりだから、はねがあるのさ。おはなさんはにんげんだから、はねはいらないのさ」
 どうして、どうして?
 はねがあれば、そらをじゆうのとべるのに。
 わたしもそらをとびたいよ!
「おはなさんはスキップじゃないとそらをとべないよ。そらのうえにあるくににいけないよ。あきらめたら、ずーっとそらをとべないよ。それじゃあ、おいらはじかんだからもういくね。またねー、おはなさん」
 そういって、とりさんはそらのむこうへととんでいった。
 いいなあ、いいな。そらをとべて。。
「あーあ、スキップができるようになりたいな」
 トトット、トン。トントン、トンッ。
「あ! できた!」
 
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第10回 日本新薬こども文学賞応募作品
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