第12話 其はスノードームの檻なり

「ただいま、彩月」 「お帰りなさい、細雪ちゃん」  ここはフェルトリタ大公国のとある町。  季節が冬に移り変わろうと一度たりとも雪が降ることのないこの町は、雪降らずの町と呼ばれている。 「今年はどうでしたか?」 「あー、 […]

第11話 其は地中で溺れる薬なり

 カランコロン。カランコロン。 「おや、コレットじゃないかぁ。お帰りぃ」 「ただいま、マスター。部屋は空いてる?」 「水のダンジョンならいいよぉ」 「やった! それじゃあ、一ヶ月分の宿泊費を置いとくね」 「まいどありぃ」 […]

第10話 其は人形のクッキーなり

 メルゲニア侯爵家のお嬢様は、我が儘な方だと言われている。  使用人で気に入った者がいれば専属として世話を任せ、気に入らない者がいれば自分から遠ざけるか解雇してしまうのだ。知り合いの紹介でメルゲニア侯爵家のオッド・ジョブ […]

第9話 其はイヌ科を好む犬笛なり

「犬だ!」  フェルトリタ大公国のある村で嬉しそうな声が響く。  犬――ではなく、狼を連れて世界を旅するクロードが声の聞こえた方へ視線を向けると、目を輝かせた少女がこちらを見ていた。 「……あー、お嬢さん。この子たちは犬 […]

第8話 其は天候を操るオカリナなり

 ざあ、ざああ。  ざあざあ、ざあざあ。  今日も雨が降っている。 「……はぁ、ただいま」  両手にたくさんの食料品が入った袋を持ちながら、キャスリーンは疲れたようにつぶやいた。  玄関で雨靴を脱ぎ捨て、キッチンへ向かう […]

第7話 其は貴方を守る鈴なり

 傷を負った兵士が、目の前を通り過ぎる。一人、二人ではない。十人、二十人と視界に入るほとんどの者は誰もが傷を負っていた。  きっかけは国をまたいで起きた災害と凶作だ。災害に巻き込まれ、凶作で飢えて死んだ者は少なくない。ど […]

第6話 其は茨を喰らう炎なり

「ここが、あの人が眠っている場所か」  茨に覆われた城の前に、オリヴィアは立っていた。  ――手が震えている。  ここに来てやっと緊張しているのだろう。オリヴィアは震える手を強く握りしめ、目の前に建つ城を睨みつけた。 「 […]

第5話 其は白ユリの花束なり

「さて、これで完成だよぉ」  そう言って、店主は薄紅色のラッピングを施した白い花々があふれる花束を目の前にいる彼へと渡した。 「白ユリに鈴蘭、そしてカスミソウか。エリカにぴったりの花だな」 「白ユリ姫様に渡すなら、白ユリ […]

第4話 其は雪うさぎの振り袖なり

「やあ、店主! 注文したモノはできているかな?」  ガラゴロンといつもとは違う音を立てて店の扉が開いた。  このように店の扉を乱暴に開ける客はそういないので、店主は客の声を聞かずとも誰が来たのかすぐに分かった。まあ、扉を […]