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第22話 其は蛍石の瞳なり
――ベイリーウス王国。 この国は大きな変革を迎えようとしていた。 長年、国を統治してい当代の国王が王権の返上を申し出たのだ。それはすぐに各国へ伝わり大きな話題となったが、ベイリーウス王国内では何故か比較的早く受け入 […]
第21話 其は赤い目のドールなり
トゥーサンの耳に誰かの泣く声が聞こえてきた。 それは不思議とトゥーサンの心を揺さぶるもので、その声に導かれるかのようにトゥーサンの足は声のもとへと歩き出す。 甲高い声はどうやら幼い少女のようで、近くに保護者がいない […]
第20話 トンボ玉の道しるべなり
干からびた大地の上で、一人の少年が呆然と座り込んでいた。 少年の目の前には一人の女性が倒れている。つい先程、命の灯火を消したばかりの女性が。 女性の右手は少年に向かって伸びており、その手には丸いガラス玉のついたブレ […]
第19話 魂を糧に響く箏なり
鼓の目の前には新品の箏が置いてある。手触りの良い布の真ん中に、ぽつんと一つ――美しい装飾の施された箏が……。 「翼さん。これ、本当にわたくしが貰ってもよろしいのですか?」 「ええ、もちろん」 「お高いのではありませんか […]
第18話 其は堕胎の香炉なり
カランコココ。店の扉が開く音が聞こえてきた。 「いらっしゃいませぇ」 「おはよう、店長さん。今日もいい天気だね」 「チェーザルじゃないかぁ。君が朝早くにやってくるだなんて珍しねぇ」 「低血圧だから朝は苦手だけど、起きれ […]
第17話 其は金運を操る腕輪なり
「なあ、大将。これってもしかして、ここのやつ?」 「あん? ……なんで君がそんなモノを持っているんだいぃ?」 「あ、やっぱりここのやつだったのかー」 ルメイ堂の常連客である達喜が胸元のポケットから取り出したのは、金色の […]
第16話 其は天に向かう羽なり
「空を飛んでみたいね」 「ねー」 「ぼくたちの背中に羽があったら、どこまでも飛んでいけるのにね」 「そうね」 「苑はどんなところに飛んでいきたい?」 「わたしはお花畑かなー。蒼空は?」 「ぼくは雲の上かなあ」 「どうして […]
第15話 其は運命を繋ぐ青バラなり
「こんちゃーす、店長さん」 「おや、セレーネじゃないかぁ。久しぶりだねぇ」 「半年ぶりってとこっすねー。今回はフェルトリタまで行ってきたんで、お土産話はいっぱいあるっすよ」 「それは楽しみだねぇ」 今日もルメイ堂に常連 […]
第14話 其は夢紡ぐ梅扇なり
「涼花。貴女は何度同じことを言えば理解するのですか」 「すみません、師匠」 「すみませんと言えば現状が変わるのですか? いいえ、何も変わりません。いつもそう言っているはずですが?」 「はい、その通りです」 「ふぅ……。踊 […]